1. 1993年のブーム

1993年、日本でナタデココが大ブームになった。原料のココナッツは主にフィリピンから輸入された。日本の輸入の約半分はキッコーマン系・デルモンテ系のルートを通ったとされる。

参照(アーバンライフ東京・ナタデココブームの検証):
https://urbanlife.tokyo/post/42540/

参照(ココウェル通信・ナタデココのブーム):
https://www.cocowell.co.jp/contents/column/c_200903/

参照(JETRO・フィリピンのココナッツ産業):
https://primer.ph/column/genre/jetro/vol187-jetro/

ブームは去った。しかしブームが作った構造は残った。

  1. ココナッツ農家と信託基金

フィリピンは世界有数のココナッツ生産国である。2021年、「ココナッツ農家・産業信託基金法」が成立した。マルコス政権時代に農家から徴収されていたココナッツ税(ココナッツ・レビー)の資産を農家に返すための基金で、規模は約1,000億ペソとされる。

参照(国会図書館 ISSUE BRIEF「フィリピン ココナッツ農家・産業信託基金法」):
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11668887_po_02870214.pdf?contentNo=1

ココナッツ農家は長年、小規模・零細のまま放置されてきた。日本のブームの恩恵は、畑には届かなかった。

  1. 356億ドルの送金——人が輸出品になる

2025年、フィリピンの海外出稼ぎ労働者(OFW)からの本国送金は356億ドルに達し、GDPの約7.3%を占めた。過去最高である。

参照(OFW送金2025年過去最高):
https://blog.orbitremit.com/ofw-remittances-record-2025-aus-nz/

農業で食べられない人々は、自らが「輸出品」になる。日本はその受け入れ先のひとつである。

  1. 借金を背負って来る人たち

日本の技能実習制度で来日する実習生の平均費用負担は54.2万円。来日時に借金がある者は54.7%に上る。フィリピン人のケースでは、ブローカーに100万円近くを要求される例も報告されている。

参照(法務省・技能実習生の費用負担調査):
https://www.moj.go.jp/isa/content/001377469.pdf

参照(ヒューライツ大阪・フィリピン海外雇用庁の注意喚起):
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2019/11/10-1.html

日本側の「需要」——安い食料、安い労働力——は、供給側の弱者の借金として成立してきた。ナタデココのブームから30年、その構図は変わっていない。

  1. 問い

・ブームの利益は誰に渡り、リスクは誰に残ったのか
・ココナッツ税の返還に70年近くかかった構造と、技能実習生の借金の構造は、どこが違うのか
・日本の食の「豊かさ」の対価を、なぜ最も弱い立場の人が払い続けるのか

結論は書かない。資料は国会図書館・法務省・公開記事である。

(執筆: 2026-09-24 / 参照した資料の複製は全て保存済み。元リンクが切れた場合はコメントでお知らせください)


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